公立大学法人 都留文科大学

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比較文化学科

研究室 & ゼミ紹介6

更新日:2021年3月26日 ページ番号:0008791

授業風景

「文化」が揺れ動くさまに
分け入っていく

青木 深 先生
青木 深 先生

 私の研究分野は歴史人類学とポピュラー音楽研究です。具体的には、戦後日本の米軍基地という接触領域を結節点として、太平洋をまたいで人や文化が移動し混交していくさまを考えてきました。ここ数年は対象の年代を拡張し、冷戦初期にアメリカで受容された日本のポピュラー・ソングの歴史と記憶を掘り起こす研究と、20世紀初めにアメリカのサーカスなどで演じた日本のアクロバット芸人の姿を探求する研究とを、並行して進めています。
 「表象文化論」「日本文化・社会論」などの担当講義では、このような私自身の研究から見えてきたことを凝縮して伝えたり、研究の途中経過や現在進行形の疑問も組み込んだりしながら授業をしています。ゼミ選択の際のキーワードは「近現代日本文化」です。現在(2023年度)の4年生が最初のゼミ生ですが、前任校で指導してきた学生の卒業論文のなかには、たとえば、「ピアノを弾く」ことの社会的・文化的な意味が日本でどのように変容してきたのかを多面的に考察する論文や、占領期の子どもにとっての「自由」の意味に迫っていく論文など、思わず引き込まれてしまう力作もありました。
 時間とともに生きる人間の「文化」は常に揺れ動いています。私のゼミや講義では、近現代の「日本」に関連した音楽や芸能や映画などを「学(び)問(う)」の素材に取り上げます。そして、その社会的・政治的・経済的な文脈や、人びとがそれを体験し、記憶したり忘れたりしていく動態を考えます。そうした学びの過程で、「日本文化」という観念をその内側から相対化し、場合によっては解体し複数化していけるような、粘り強い思考力や想像力、また調査力や表現力を養ってほしいと思います。