歌唱 中村 仁
キーワード:
音楽教育学、声楽、合唱指揮
この研究室・ゼミの教員
研究を始めたきっかけ
小学生の頃から、歌うことはわたしにとって「世界とつながる窓」でした。やがて東京藝術大学および同大学院音楽研究科で声楽を学び、ウィーンでの研究滞在を経て、音楽の奥深さと社会的意義に魅了されました。演奏の喜びと同時に、「なぜ歌うのか」「音楽は人に何を与えるのか」という問いが芽生え、それが教育・研究の道へと進む原動力となりました。今でも舞台に立ちながら、歌を通した学びの可能性を追い続けています。

わたしの研究室
わたしの研究室では、「声を通して世界と関わる」ことをテーマに、声楽と音楽教育の接点を探究しています。特に小学校における歌唱指導や合唱教育に注目し、「子どもの声をどう育てるか」「歌うことにはどのような教育的価値があるのか」といった問いを、音楽教育学・音楽学・演奏実践の三つの視点から考察しています。
ゼミでは、週に一度の実技レッスン(本研究室では一人あたり30分実施)を通して、オペラや歌曲を実際に歌いながら、音楽の原点である〈声〉の魅力を全身で味わう機会も大切にしています。子どもたちに歌の楽しさをどう伝えるか──その方法を、マンツーマンレッスンの中でじっくり育てていきます。
4年次に執筆する卒業論文と並び、学びの集大成となる卒業演奏会では、都の杜うぐいすホールでのびのびと歌声を響かせることができます。音楽大学に劣らないレッスン環境と、教育現場での実践的な学び。その両方を手にできるのが、本研究室の大きな魅力です。
はじめは「人前で歌うのが怖い」と話していた学生も、4年生になる頃には、舞台の上で堂々と歌い、「自分の声で誰かの心が動く」ことの喜びを知ります。歌を研究するだけでなく、「歌とともに生きる」。そんな学びの時間を一緒に紡いでいきたいと思っています。

いま興味のあるテーマ
生涯学習講座や地域の演奏活動を通じた「ひらかれた音楽教育」のあり方に関心があります。学校教育だけでなく、世代や立場を超えて、誰もが〈声〉でつながる場をどうデザインできるか。例えば、オペラやドイツリートを通して、初めて音楽に触れる人でも楽しめるプログラムを考えたり、講座での対話をもとに学びの循環をつくったり。教育と芸術、研究と実践が交差する場を通じて、〈音楽と社会〉の関係を見つめ直す取り組みを進めています。