片山 夏紀 研究室

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アフリカ地域研究、1994年にルワンダで起こったジェノサイド(集団殺害)、ジェノサイドの犯罪を草の根レベルで裁いたガチャチャ裁判

この研究室・ゼミの教員

カタヤマ ナツキ

片山 夏紀

KATAYAMA Natsuki

教養学部 比較文化学科 講師

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研究を始めたきっかけ

幼い頃から、人と人がなぜ争うのかという疑問を抱いていました。1990年代は、ルワンダ、シエラレオネ、ソマリアなどアフリカ諸国で紛争が多発していた時期であり、当時高校生であった私は「もしアフリカ諸国の紛争がすべて解決すれば、世界はもっと平和になる」と書かれた新聞記事を読み、アフリカ諸国の紛争について知りたいと思うようになりました。

大学でアフリカの歴史や政治・経済、文化の講義を受けるなかで、ルワンダジェノサイドの要因が考察された武内進一教授の論文を読み、ジェノサイド後のルワンダがどうなっているのかを自分の目で見てみたいと思い単身で現地に行きました。

ジェノサイドで破壊された土地にビルが建てられ発展している首都キガリを見て、ルワンダがどのように社会を立て直してきたのかを知りたくなったことが研究を始めたきっかけです。

わたしの研究室

ルワンダでは1994年にジェノサイドが起こり、多数派民族フトゥが僅か100日間で少数派民族トゥチを50万人以上虐殺しました。それまで同じ村で暮らしていた人々はジェノサイドで被害者と加害者に分かれましたが、ジェノサイド後も近隣で暮らす事例があります。私はジェノサイド後の農村社会に住み込み、被害者と加害者に直接聞き取り調査を行い、現地の人々がどのように関係を築き暮らしているのかを研究しています。

特に、ジェノサイドの被害者と加害者の関係構築に大きく関わっているとして着目しているのが、ジェノサイドの犯罪を草の根レベルで裁いた「ガチャチャ裁判」(Inkiko Gacaca)です。ジェノサイドに扇動されたフトゥ市民を裁くため、全国の市町村に約1万2,000箇所設置された臨時の裁判です。裁判官や弁護士や検事といった法律資格をもたない人々が地域ごとに判事を務め、事件を精査し、2012年に閉廷するまで約200万件の事件と約100万人の加害者を裁きました。

なかでも、未だ課題となっているのがジェノサイドの賠償です。ガチャチャ裁判は窃盗罪と器物損壊罪を犯した加害者に賠償を命じましたが、賠償額は膨大であり、その多くは現在も未払いのままです。このような問題に被害者と加害者がどのように取り組み解決しようとしているのかを、聞き取り調査とガチャチャ裁判の裁判記録を閲覧する方法を組み合わせ研究しています。

2025年4月から都留文科大学に着任し、初めて担当するゼミは3年生6名でスタートしました。卒業論文を2年かけて完成させることを見据え、前期は卒業論文とはどのようなものかの基礎知識を学んでいます。川崎剛教授の著書『社会科学系のための「優秀論文」作成術:プロの学術論文から卒論まで』(勁草書房、2010年)を読み、問いの立て方や先行研究の分析手法など論文の「型」を知り、さらに各受講生の関心に沿った卒業論文を全員で読み議論しています。後期は卒業論文の初稿を書き、受講生全員で初稿を読み合いコメントし合い、各自加筆修正を重ね修正稿を書き上げます。

いま興味のあるテーマ

私がいま興味をもっているテーマは、ルワンダで13世紀から行われてきた慣習法「ガチャチャ」です。ガチャチャは「芝」を意味するルワンダ語(agacaca)に由来し、住民が芝に対座し土地問題や口論などの民事的な問題を話し合い、調停してきました。

これまで研究してきた刑事裁判の「ガチャチャ裁判」が施行される前、ジェノサイドの犯罪は慣習法「ガチャチャ」で調停されていたことが分かっています。しかし記録が残されておらず、詳細は明らかにされていません。ジェノサイドの犯罪をどのように慣習法で調停していたのかを聞き取り調査で明らかにしたいと考えています。

日本学術振興会2025年度研究活動スタート支援に採択され、都留文科大学より学術研究交付金を受け、この研究費をもとに今後の研究を進めます。