幾何学 寺川 宏之
キーワード:
代数多様体、導来圏、Bridgeland安定性条件
この研究室・ゼミの教員

テラカワ ヒロユキ
寺川 宏之
TERAKAWA Hiroyuki
教養学部 学校教育学科 教授
研究を始めたきっかけ
小学生の頃から算数・数学が好きでした。数や図形についてのいろいろな計算だけでなく、関数とグラフ、代数方程式と図形など、それらのしくみや関係に面白さを感じました。また初等幾何(ユークリッド幾何)では、いいアイデアを思いついて、問題が美しく解けたときの感動や達成感はいまでも記憶に残っています。
大学進学を考える時期にはすでに数学科で学びたいと思っていました。大学の数学科では、代数学、解析学、幾何学などを学びますが、その中でも代数学に興味を持ちました。特に可換代数学とそれを基礎にした代数幾何学の美しさに惹かれ、代数幾何学を専門とすることを選びました。
代数幾何学ではまず代数多様体の射影空間への埋め込みについて研究し、代数曲線や代数曲面の高次の埋め込みの構造の解明に挑戦し、ほぼ満足できる結果を得ることができ、それが学位論文になりました。その後、2000年代に入り、数理物理学との関係から代数多様体上の連接層の導来圏に興味を持ち、マックス・プランク数学研究所に1年間滞在したころから三角圏や導来圏のBridgeland安定性条件の研究を始め、現在に至ります。
わたしの研究室
わたしの研究室には、代数学や幾何学に興味を持つ学生が来てくれます。3年生は、これまでに代数学では初等整数論や群論、幾何学ではユークリッド幾何学や双曲幾何学、円錐曲線論などをテーマにテキストを輪読してきました。
数学のゼミでは教員は講義のようなことはしません。学生と数学の話をして興味のあるテーマを決め、そのテーマについてのテキストを選びます。そして学生は順番にテキストの発表部分を説明し、質問などが出ればそれに答えるという形で進んでいきます。発表する学生が説明した内容について、教員と発表に当たっていない学生から質問が出れば、それについてさらに発表者が説明します。また、発表者が疑問に思ったり、わからないことがあったりして質問が出れば、教員と発表者、他の発表に当たっていない学生みんなで考え議論しながら、理解を進めていきます。問題について深く考え、解決のためのアイデアや証明の論理的に整然とした美しさを味わえるのは数学ならではの醍醐味です。
発表の仕方にも慣れ、ゼミの流れがよくなったころに、4年生は興味を深めた対象について調べたりしながら、さらに研究を進めていきます。そして卒業論文の作成に挑戦し、研究の成果をまとめます。
卒業後の進路は、多くの学生が小学校・中学校の教諭になります。また、地方公務員やIT関係の企業など、数学を学んだ経験を活かした進路を選択する学生もいます。いまも多くの学生がそれぞれの分野で活躍し、近況報告などをしてくれます。そんな話を聞くことがとても楽しみです。
いま興味のあるテーマ
可換代数学は整数や多項式の性質を一般化することに始まり、代数幾何学の基礎としても研究されています。代数幾何学は、小学校から中学校で学ぶ数や多項式の計算,比例や2次関数,1次方程式や2次方程式、それらの連立方程式、そして高等学校で学ぶ解析幾何学(あるいは座標幾何学)を、変数の個数と連立する方程式の個数を増やすことにより定まる図形である代数多様体を研究する数学の領域です。中学校・高等学校の図形分野で学ぶ直線や、円、楕円、放物線、双曲線などの2次曲線(あるいは円錐曲線)は代数方程式で定まる図形なので、すべて代数多様体です。
これまで2つの問題に取り組んできました。1つは代数多様体がどのように射影空間に埋め込むことができるのかという問題についての研究です。もう1つは三角圏や代数多様体上の連接層の導来圏のBridgeland安定性条件に関する研究です。Bridgeland安定性条件の研究ではBogomolov-Gieseker型の不等式についての研究が重要だと考えられ、その不等式に関する予想とともに、最適な不等式を見つけることに取り組んでいます。