発達心理学 市原 学
キーワード:
制御過程、自動過程、二重過程
この研究室・ゼミの教員
研究を始めたきっかけ
学生の頃は教育心理学(動機づけ、学習方略)の研究をしていました。しかし身分が安定してからは食いっぱぐれる心配がなくなったので、本当に自分が興味を持ったことをやろうと思い現在の研究に至りました。
また、自分が大学で職を得たのは2005年で、諸々あって周囲からは「将来は研究費がもらえなくなるよ」と脅されてきました。そのため実験や統計用の有償ソフトウェア(単価で10万円くらい)を使って継続的に研究を続けるのは難しいと予想されたので、扱いは面倒だけどフリーで使えるソフトウェアに乗り換えることにしました。おかげでさまで、ちょっとばかりプログラムを読んだり、書いたりすることもできるようになりました。
わたしの研究室
いちおうゼミや研究室は「学習心理学」の看板を掲げていますが、現代的には「認知心理学」と呼んだほうがふさわしいかもしれません。というのも、直接測定することはできない「知識」というものを想定して、その知識の個人差や実験による条件操作によって人の行動や反応がどのように変化するのかを観察するからです(「知識」というあいまいな概念を排除して、条件操作と行動の変化の関係のみを扱う場合「学習心理学」といいます。古い言い回しですが)。
学生にはゴリゴリの実験研究を強要したいところですが、昨今の大学ではそれは無理というものです。本人たちのやりたいようにやらせています。実験にかぎらず、アンケート調査、文献研究をする人もいます。内容もパーソナリティ(個人差)、人間関係、感情など、それぞれの興味関心に沿って、自由にやらせています。
いま興味のあるテーマ
心理学に限ったことではありませんが、人のこころを知るためには質問紙やアンケートといった自己報告式の測定具がたびたび使われます。しかし、質問紙からデータが本当に知りたいこころのありようをどれくらい正確に反映しているのでしょうか。アンケートに答える際には、無記名調査といえども「自分をよく見せたい」、「うしろめたいことは書きたくない」といった願望(系統的誤差)が紛れ込んでしまうものです。
こうした質問紙の弱点は1980年代にはすでに明確に意識されていて、間接測定と呼ばれるものが登場してきました(詳細はgoogleなどで調べてみてください)。ただ、こうした間接測定で得られたデータにも系統的誤差は混入してしまうのは避けられません。そこで、2000年代半ばから多項方程式、過程分離手続きといった数理的な方法を使い、より純粋に測りたい内容を抽出するような試みが現れてきました。私もこのような研究を行っています。また、この研究から派生して、知識がどのようにして獲得されるのか、さらには活性化・利用されるのかにも関心があります(評価条件づけ)。