臨床教育学 邊見 信
キーワード:
メディア、教育、歴史
この研究室・ゼミの教員
研究を始めたきっかけ
戦時中、日本の子どもたちを軍国少年少女にした映画・ラジオが、戦後=占領期には子どもたちに民主主義と平和を教えたことを知り、「内容が『正しい』なら、手段は問われないのか?」と感じたのが研究のきっかけです。現代においてもメディアをつかった様々な教育の「夢」が語られていますが、「その夢の正体はなにか?」を問いつづけています。
わたしの研究室
研究では、戦前から戦後初期のラジオや映画を利用した教育実践を対象にしています。日本放送協会や映画製作会社、文部省といったメディアの送り手側の意識と、教師や子どもといった受け手側の意識が、どう重なり、どうズレていたのかに注目しながら、当時の新しいメディアであったラジオ・映画が、どのように教育に活用されたのかを研究しています。
ゼミでは、「メディアは『子ども』の姿をどう描いてきたか?」をテーマにしています。子どもや教育をめぐる問題を新聞はどう報じてきたのか、各時代の小説や映画で学校はどう描かれてきたのかなどを調べ、考えています。ほかに、「メディアをめぐって必要とされてきた『力』とは?」、「メディアはどのような学びを可能にしたか?」といった視点で本を読み、議論を深めています。

いま興味のあるテーマ
いま興味をもっているのは、メディアを介したコミュニケーションにおける感情の問題です。メディア教育には、メディアを使って教育するという側面だけでなく、メディアそのものを教育の対象とするという考え方があります。
これまでのメディア教育では、主に情報の真偽や正確性を見極める力を育てることが課題とされてきました。しかし、メディアが私たちの感情にどのように働きかけ、揺り動かしているのかという問題意識から、メディア教育のあり方を見直す可能性があると考えています。
研究室インタビュー
漠然とした不安に翻弄されることなく、目の前の子ども達と向き合える教員の育成を目指しています
臨床教育学は、従来の教育制度や実践方法にこだわらず、個々個別の具体的な事例に目を向け、実践の豊かさや子どもの育ちの複雑化などを分析していこうという新しい取り組みです。ゼミでは、私の元来の専門である日本教育史の手法を用いて、歴史のなかで、メディアが子ども達あるいは教育現場にどのような影響をもたらしてきたのか、現状はどうなのかといったことを議論します。また、長期休暇などにゼミ合宿を行い、教育現場を視察して、個々個別の実践を学んでいます。
