このシーズの研究者
研究を始めたきっかけ
小3の時に国語教科書で読んだ登呂遺跡発掘物語に強く心を動かされ、それ以降歴史、特に古代史が好きになりました。高校時代はバブル期で、中東からの労働者を近所で見かけるようになったのと同時に、中東との文化差によるトラブルも報道されていたことから、中東史に興味を持つようになりました。それでも古代史好きは変わらずに大英博物館展を見にいき、そこで展示されていた新アッシリア時代の象牙の彫像に強く惹かれたのを覚えています。大学では医術の歴史に興味を持ったのですが、当時は史料の言語であるアッカド語が読めなかったので、既に英訳の助けが見込める、病気や災いを予言する占星術の研究から始めました。
研究概要
現在は古代オリエント世界、特に紀元前7世紀ごろの新アッシリア時代に占星術や医術、呪術に関わった知識人たちと王権力、帝国的支配との関係に注目して研究しています。また、研究対象である新アッシリア時代の粘土板文書群こそが、19世紀に西欧で誕生した近代的な古代オリエント研究を急激に発展させましたから、19世紀以降の欧米による中東発掘史、及び、楔形文字解読をはじめとする学問史も並行して研究しています。欧米で古代オリエント研究が始まった背景にキリスト教と聖書があります。しかし、日本はキリスト教の国ではありません。そこで、日本ではいつ、そしてなぜ古代オリエント研究が始まったか、をも研究することになりました。そうすると、日本でも近代国民国家形成の過程で日本民族のルーツを探る動きがあり、その一部に日本民族のルーツを古代中東に見出そうとする「偽史」があることがわかりました。しかも、こうした古代中東に特別な意味を意図的に見出そうとする言説は世界各地で見られるため、こうした言説がどこの誰によりなぜ生成され、どういう人たちに受容されたのかについても研究を進めています。
連携できるポイント
私には約15年の小中高の学校教員(社会科・地理歴史科)としての経験もあるので、学校教育関連での連携は可能です。特に現役高校教員時代に多く関わった総合的な探究活動、小論文に向けたリーディング、ライティング指導、また、21世紀になってから学校における歴史教育にも変化が見られますので、歴史学、文献学の素養と、IB校で勤めていた経験を活かした教材開発や授業プランなどで連携できると思います。さらに、歴史学の史料批判というスキルは、年齢を問わず情報リテラシー教育に活かすことができます。特に「偽史」言説研究の手法を活かし、現在社会問題となっているフェイクニュースや歴史否定論対応策でも連携可能です。
提供できるシーズまたは支援できる分野
- 社会科教員、特に地歴科教員の指導
- 社会科、地歴科に関係する教材開発
- 小論文などのライティング指導法に関する講演や指導
- フェイクニュースや歴史否定論に関する講演
- 情報リテラシー教育