このシーズの研究者
研究を始めたきっかけ
小説を読むことが好きで文学研究の道に進みましたが、研究を続けるうちに、近代小説の《神髄》を読み解くことが、自己の主体の再構築につながることに気づきました。
中国の大学では日本語・日本文学を専攻していましたが、その専攻を選んだのは、中国にとって地理的に近く、心理的に遠い国、日本の文学を読んでみたいからです。日本の大学院に進学してからは、読みの原理論・方法論を勉強し始め、日本文学と海外文学との比較にも取り組むようになりました。
研究概要
大学院時代から現在まで一貫して取り組んでいる研究テーマは、近現代小説における語りの深層構造に関するものです。この研究を通して、近代小説が言語の芸術であると同時に、その語りの深層構造の中に〈言語以前〉(言語では捉えられない了解不能の領域)の次元を内包する作品が存在することを明らかにしてきました。森鷗外、夏目漱石から村上春樹に至るまでの日本の近現代小説のみならず、カフカや魯迅といった海外作家の作品についても、同様の世界観に基づいていることを、作品分析を通して論証しています。こうした小説に表れている世界観の認識は、実は古典東洋哲学や西田幾多郎の哲学と通底する部分があり、近代小説の深層構造と哲学思想との比較にも取り組んでいます。
さらに現在は、日本人学生と海外の学生が共に学ぶ文学の授業を担当しており、文学を通じた国際交流や異文化理解についても研究しています。
連携できるポイント
グローバル化が進む現代社会において、国際交流や異文化交流の重要性が高まっています。そこで鍵となるのが「他者」というキーワードです。他者の了解不能性を認識することによって、はじめて真の他者理解が始まるというパラドックスを理解するには、了解不能な他者性を描く近代小説の読解が大いに役立ちます。こうした文学を通した国際交流・異文化交流に関する私自身の実践的な経験を、国際交流に取り組む皆さんに少しでもお伝えできればと考えています。
提供できるシーズまたは支援できる分野
- 文学と国際交流・国際共修科目(文学)研究会・ワークショップの講師として支援。
- 国際共修科目(文学)の教材開発。