このシーズの研究者
研究を始めたきっかけ
もとは埼玉大学教育学部の国語専修で学んでいたのですが、文学そのものを探究するのでなければ面白くないと思ったのがはじまりです。近代文学のゼミで小説ではなく詩を選んだのは、言葉への不信と関心が強かったからです。学部時代のゼミの先生が外へ出ることを勧めてくださり、立教大学文学研究科へ進学しました。私自身もそうでしたが、大学院で出会った仲間たちは皆、何者かになるためではなく今を生きるのに切実に文学研究を必要としていたと思います。
研究概要
中原中也は「汚れつちまつた悲しみに……」や「サーカス」など今日でも愛唱される数々の詩によって一般に知られていますが、作品の「姿」や「型」についての理念が育つ必要があると説き、実にさまざまな詩形を試みた近代詩人です。私にとって中原中也というのは興味深い研究対象であるだけでなく、詩を読むとはどういうことかという原理的な問いを突きつけてくる詩人の権化のような存在です。小説的読解に還元されない詩のフォルムや叙法に着目し、詩の言葉を文脈ならぬ詩脈として動態的に捉える読解の方法を探究しています。中原中也を主たる対象としつつ、北原白秋、宮沢賢治、富永太郎、小熊秀雄などの同時代詩人の作品や詩論を参照しながら、近代詩の表現の歴史を広い視野から捉え直しています。また、ポスト戦後詩の時代の谷川俊太郎や、東日本大震災後の辺見庸といった現代詩へと対象を広げ、詩の表現が時代といかに呼応するかを批評的に考察しています。
連携できるポイント
これまで地域交流研究センター主催の「つるぶんカフェ」において詩・短歌・俳句に関する企画を継続的に開催し、地域住民と学生が詩の言葉を介して交わる場を創出しています。また、顧問を務める近現代詩歌研究会においては、学生の創作活動を支援し、その成果を文学フリマ(東京)で頒布するなど、学外への発信にも力を入れています。

提供できるシーズまたは支援できる分野
- 近現代の日本語詩に関する講義提供
- 地域住民と連携した詩歌に関するワークショップや講座の企画
- 詩歌を通じた文化交流の場づくりとコーディネート