インドにおける都市貧困と住民組織化にみるジェンダー不平等

このシーズの研究者

サトウ ユタカ

佐藤 裕

SATO Yutaka

教養学部 比較文化学科 教授

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○ 専門分野
人文・社会 社会学

○ 学位
ジャワハールラル・ネルー大学大学院 社会科学研究科 社会システム研究センター、東京都立大学大学院 社会科学研究科 社会学専攻、明治学院大学大学院 国際学研究科 国際学専攻、専修大学 文学部 人文学科地理学コース

研究を始めたきっかけ

私の研究の原点は、大学生のころにスタディーツアーを含めて2度渡印し、都市スラムでの貧困の実態や女性の過酷な労働を目の当たりにするとともに、NGOによるコミュニティ開発の可能性を知ったことです。そこから国際協力の道を志すようになり、地域研究と国際開発が学べる大学院に進学しました。修士課程在学時に再び渡印し、現地NGOの協力を仰ぎながらスラムでの住民組織化に関する調査をおこないましたが、そのときに開発と社会科学に関する自らの無知を思い知らされました。帰国後、大学院の先生方からの後押しもあり、研究者のキャリアを選びました。「人の顔がみえる」研究をすべくインドに留学、現地の大学院で社会学の博士号を修めました。

研究概要

インド、グジャラート州アフマダーバード市のスラムを事例に、NGOが官民連携で進める居住改善事業への女性参加と、その意図せざる結果としてのカーストを媒介とした近隣での権力関係に関する実証研究を四半世紀にわたりおこなってきました。同時に、コロナ禍直前まで同市に拠点をおくNGOによる貧困層や下層中産階級の若者向けの就業力支援に関する事例研究も手がけました。この研究では、ヒンドゥー至上主義を背景に深化するムスリム居住区のゲットー化や労働市場からの排除に着目しながら、ムスリム女性の移動の自由を阻む女性隔離や家の名誉などの文化規範を分析してきました。同時に進めた低カーストのヒンドゥー居住区での調査では、フォーマルな労働市場に参入するうえで必要な文化資本の欠如に加え、労働の場でのカースト差別も分析してきました。以上をふまえて、就業力支援をとりまく社会文化的な困難を検討してきました。著しい経済成長を遂げつつも、階層・宗教・カーストの分断が深まるインドの大都市圏において〈居住と労働〉をめぐるジェンダーやカースト関係がどうせめぎあうのかを分析し、他の途上国都市との異同を理解するのが目下の関心事です。

連携できるポイント

目下、日本学術振興会とインド社会科学研究評議会による二国間交流事業研究の助成を受けて、低所得層女性による強度労働、食や栄養素の剥奪に関する日・印の比較社会学研究に着手している。山梨県内では、子の基本的ニーズ充足と引き換えに働く貧困女性らが自己犠牲を甘受する質的データの収集をめざしているが、フードバンクやNGOと連携し、社会福祉協議会や自治体からの情報提供支援を仰ぎながら、社会学的見地から政策提言をおこなうことができる。

また、日本で人材交流を進める国際協力団体との意見交換も可能である。

提供できるシーズまたは支援できる分野

  • グローバルサウス(途上国や「新興国」)におけるジェンダーと貧困に関する講演
  • 住宅や労働、就労支援にかかわるNGOと国際協力の役割

産学・地域貢献に関する経験・実例及び連携できる団体

  • 各種フードバンク
  • 国際協力NGO
  • 国際協力機関
  • 多文化共生にかかわるNPO