このシーズの研究者
研究を始めたきっかけ
地層には様々な情報が潜んでおり、それを説き明かすことで過去のことが判ることが面白く、理学部地質学科に進学した。学生時代はフィールドワークをしながら様々なことを学んだが、卒業研究では第四紀地質学をテーマとし、卒論の地質調査をしながら、豊かに水が湧き出す地層と水に乏しい地層があることに興味を持つようになった。卒業後、就職した民間企業で地下水関連業務を担当することになったが、帯水層や難透水層の分布、水理学的性質や地質構造を正確に把握することで、地下水流動や井戸での取水可能量を論理的に評価できることに感動を覚えたことがきっかけで、本格的に研究に取り組み始めた。
研究概要
主に新生代第四紀(約260万年前以降)に形成された地層を対象として、地層中の地下水流動を研究している。大阪平野や関東平野など、海岸平野部の都市地盤は、氷期・間氷期に代表される過去の気候変動によって、氷期には海水準が低下するため河川成の砂礫層が、間氷期には上昇するため海成の粘土層が交互に堆積している。都市域の地下水は、帯水層である複数枚の砂礫層中を流動し、人間活動の影響を受けて水質も変化していることが明らかとなった。それに対して山間部に位置する山梨県都留市では、富士山の噴火活動の影響を強く受けている。すなわち、都留市域の桂川の谷底平野には、下位に富士山の山体崩壊で形成された岩屑なだれ堆積物(古富士泥流)が、上位に猿橋溶岩と桂溶岩が分布している。これらの溶岩が帯水層となり、東桂地区に湧水帯を形成している。しかし、下流域の禾生地区などでは、古富士泥流の下位に分布する河川成砂礫層が帯水層となって、豊富な被圧地下水を胚胎していることが明らかとなった。これらの水資源は、都留市の上水道水源として貴重な水資源となっており、持続的な利用のための保全が必要である。山間部では地下水面が滑り面となって地滑りが発生するなど、地下水の挙動が災害に連結することが多い。

連携できるポイント
- 地下水の水位変動解析
- 地下水の適正使用の指導
- 新規井戸掘削の影響評価
提供できるシーズまたは支援できる分野
- 水循環や水収支に関する講演
- 山梨県の地質と水質に関する講演
- 地下水流動に関する教材開発
- 水にまつわる環境教育

産学・地域貢献に関する経験・実例及び連携できる団体
- 高等学校への水循環をテーマとした出前授業
- 都留文大 地域交流研究センター 市民公開講座での現地湧水紹介と解説
- テレビ情報番組での現地湧水紹介と解説
- 山梨県「山梨の水に関する環境教育事業」での現地湧水紹介と解説