人をつなげるアートの力

このシーズの研究者

ヤマコシ ヒデツグ

山越 英嗣

YAMAKOSHI Hidetsugu

教養学部 比較文化学科 准教授

研究を始めたきっかけ

私は大学院生の頃に、メキシコ合衆国に留学しました。先住民文化が色濃く残り、映画『リメンバー・ミー』の舞台ともなった南部の小都市オアハカを観光で訪れたさいには、町の美しさや人びとのあたたかさに魅了されました。しかしその一方で、私は町中の壁面に描かれた壁画や、政府を批判するメッセージの存在が気になりました。「あれは誰がどういった目的で描いたのだろう」。こうした好奇心から、その後10年以上にわたるフィールドとのかかわりが始まりました。

研究概要

私の研究の目的は、歴史的に周縁化されてきたメキシコ先住民たちが、ストリートアートを通じていかに連帯し、かれらを抑圧してきた公権力に抵抗しているのかを明らかにする試みです。

オアハカの滞在中に私が目にした壁画やポスターは、州政府の抑圧に対して抗議をおこなう先住民の若者アーティストたちが制作したものでした。メキシコではもともと、壁画は国家が国民に政策を示すためのメディアの役割を果たしてきましたが、21世紀に入り、かれらは逆にそれを民衆の声を発信する装置として利用するようになりました。現在、かれらのアートはオアハカの町の街路だけでなくインターネット上にも広がり、世界中の人々がかれらの作品を目にすることができます。オアハカは「アートの町」としても有名となり、先住民の若者たちは創作活動を通じて自らのアイデンティティを表現しています。

連携できるポイント

文化人類学的なフィールドワークの方法論。

提供できるシーズまたは支援できる分野

文化人類学的な発想や思考力の涵養。