熟議にもとづく学校教育・市民参加を通じた公正な社会の形成に寄与する市民の育成

このシーズの研究者

サイトウ ユウジ

斉藤 雄次

SAITO Yuji

教養学部 地域社会学科 准教授

研究を始めたきっかけ

 地理歴史科、公民科を教える高校教員だった時にちょうど政治への関心を高めてもらうことを目的とする「主権者教育」が始まりましたが、『多数決を疑う』という著作に触れてから、既存の投票の体験などに終始した主権者教育では、選挙や多数決にもとづく今の社会が再生産され続け、社会課題も解決されないままなのではないか、と思うようになりました。
 またそこから、人々同士の話し合いの中に政治参加の契機を見出だす「熟議」にも注目するようになり、『熟議の理由』など熟議民主主義に関する著作を読み進めるうちに、社会的強者(例えば男性)を中心に社会が作られる限り、社会的弱者(例えば女性)が社会から排除され続けること、そこに一石を投じることのできる存在、問題を自分事として捉え、行動することのできる人々をこそ、主権者、また市民として育成していく必要があるのではないか、と思うようになりました。
 以来、熟議(民主主義)の可能性を学校教育(特に公民教育)、市民参加の両面から探っています。

研究概要

 高校の公民科において、政治学をはじめとした学問的知見にもとづくどのような授業を展開することで生徒を市民、主権者へと育成することができるのかを、様々な視点や角度(近年は特にジェンダー平等の観点)から追究する授業開発研究を行っています。
 また高校の公民科に限らず、特別活動等における校則の決定に関わることを通じた市民・主権者の育成、生徒指導や進路指導を通じた市民・主権者の育成、総合的な探究の時間等を活用した、国を超えて連帯することのできる地球市民(グローバル・シティズン)の育成のあり方についても、ケアの倫理の観点や、小学校、中学校の段階も視野に入れながら追究したいと考えています。
 さらに主権者教育を受けた子どもが大人になった時の政治参加の機会の確保の観点から、ミニ・パブリックスと呼ばれる新たな形の市民参加の可能性(社会的弱者の方がより参加しやすく、あるいは意見を届けやすくなる)、そして対面に限らずオンラインで熟議を行った際に参加者の方々にもたらされる教育的な効果についても、解明したいと考えています。

連携できるポイント

 「対学校」に関しては、社会科や地理歴史科・公民科の授業の工夫についての情報提供、あるいは授業外の諸活動における、学校をより民主的な空間にするための工夫についての情報提供、また助言者としての参加が可能かもしれません。
 「対社会」に関しては、従来より取り組まれてきた市民討議会、住民協議会に加えて近年開催が増えつつある気候市民会議を含むミニ・パブリックスに関する情報提供、あるいはその企画運営に関わる専門家の紹介などができるかもしれません。ミニ・パブリックスの中には総合計画や脱炭素社会など地域や社会の未来にかかわるテーマ、地域活性化など地域の抱える課題の解決に向けたテーマが議論されるものもあり、持続可能な地域社会の実現を、「普通の」人々の声や意見に耳を傾けながら考えるのに“もってこい”の方法であると捉えています。あるいは、話し合い(熟議)を促す仕掛け、例えばファシリテーションのあり方についても、同様のことができる可能性があります。

提供できるシーズまたは支援できる分野

 子ども、女性、障がい者をはじめとする、その声を聴かれにくい方々が「社会的弱者」だと仮定して、「そうした立場に当該の人々が置かれるのは、既存の社会がそうさせているのではないか」との視点に立ち、現状の改善やよりよい社会の実現に向けて、学校教育/市民参加のあり方について考える材料を、様々に提供させていただければと考えています。