このシーズの研究者
研究を始めたきっかけ
小学生のころから、歌うことは私にとって「世界とつながる窓」でした。音楽が人と人をつなぎ、自分の中にある感情や思いなど、言葉を超えて伝える力を持つことを実感したのです。やがて東京藝術大学および同大学院で声楽を専門的に学び、ウィーンへの研究滞在を経験するなかで、舞台に立つ喜びとともに「なぜ人は歌うのか」「音楽は社会とどう関わるのか」という問いが深まっていきました。その問いに向き合ううちに、演奏家としての表現だけではなく、「教育」の現場における歌の意義に関心が向かいました。現在では、演奏家・研究者・教育者という三つの立場を活かして、声と教育と社会をつなぐ研究に取り組んでいます。

研究概要
私の研究では、「学校教育における歌唱指導」と「生涯学習としての音楽指導の設計」を二本柱として、音楽を通じた教育的・文化的貢献のあり方を探究しています。特に小学校音楽科での歌唱活動に注目し、子どもの身体的特徴や発達段階に応じた無理のない発声法、音域設定、鼻腔共鳴の獲得過程を理論的・実践的に明らかにしています。これらの知見は、教員研修や授業改善に役立てられ、現場との接続を大切にしています。
また、生涯学習講座をはじめとする社会人向けの音楽講座では、「オペラの楽しみ」「ウィーンの音楽文化」などを題材に、音楽に詳しくない方でも楽しめるプログラムを開発し、対話を重視した構成で実施しています。音楽が専門家だけのものではなく、誰にとっても開かれた学びとなるよう心がけています。
このように教育学・音楽学・演奏実践の視座から、歌を通じて「自己表現」「社会との関わり」「生涯にわたる学び」の可能性を広げる教育モデルの構築を目指しています。
連携できるポイント
私の研究は、教育現場や地域社会と強く結びつく実践型の内容を多く含んでいます。そのため、次のような多様な連携(教育・文化・福祉の複数領域にまたがるアプローチ)が可能です。
学校現場との連携
- 小・中学校における歌唱指導のモデル授業
- 教員対象の発声・歌唱指導に関する研修会(特に初任者研修や校内研修)
- 校内合唱コンクールや学校行事での指導支援
自治体・教育委員会との連携
- 生涯学習講座の企画・講師協力
- 教職志望者・教員向けの教材開発・監修
- 市民の音楽体験を促進する地域文化政策への助言
文化施設・音楽団体との連携
- 合唱団への発声法講座
- 公開リハーサルや演奏会のプレトーク
- 市民オペラ・コンサートへの監修協力およびプログラムノートの執筆
出版社・メディアとの協働
- 教育書・音楽教材の開発支援
- メディアへの楽曲・講座内容提供
- 教育・芸術に関する執筆活動
提供できるシーズまたは支援できる分野
教育現場向け
- 子どもの声に即した歌唱指導法の提供
- 学校現場で実践できる発声トレーニング
- 合唱コンクール指導支援、学級合唱教材の作成協力
教員養成・研修支援
- 教職課程や教育委員会での音楽科指導法講座
- 初任者向け「学年別歌唱指導の方法」「声が出にくい子への配慮」などの現場知支援
市民・地域対象
- 生涯学習講座・公開講座の企画・運営(オペラ・歌曲・合唱など)
- 声を使った健康づくり・福祉施設とのコラボレーション
研究・学術領域
- 音楽教育・声楽と教育効果の関連に関する共同研究
- 質的調査・実践分析をベースとした研究ネットワーク形成
メディア・出版
- 子ども向け教材
- CD・映像教材
- 授業モデルの普及協力
社会的成果または実用化された内容、商品、特許など
- 大学公開講座「オペラの楽しみ」「〈音楽の都ウィーン〉をたどる」などは、音楽経験を問わず好評を博しており、参加者のリピート率も高い。現在は、よみうりカルチャー(荻窪・錦糸町)にて「オペラの楽しみ」を定期講座として開講している。
- 教員研修や公開授業で実施した発声トレーニングは、小学校音楽の現場で継続的に取り入れられており、教員の声に対する理解と実践力の向上に貢献している。
- 自身のCD《美しき水車小屋の娘》《冬の旅》は、教育現場でも教材として活用され、音楽科授業での鑑賞指導にも展開されている。
産学・地域貢献に関する経験・実例及び連携できる団体
- 長崎市教育委員会との連携により、市内小学校での公開授業・研究協議を実施。歌唱指導に関する具体的支援を行い、教員研修のカリキュラムにも関与。
- 文化施設(音楽ホール、カルチャーセンター等)にて、公開講座や演奏会の企画・講師として活動し、地域の文化振興・市民交流に寄与。
- NHK全国学校音楽コンクールや高文連音楽コンクール等において審査員・指導者として参加し、次世代育成に貢献。
- 地域の合唱団や福祉施設などで、発声ワークショップや参加型演奏会を開催し、年齢や障がいの有無を問わず音楽による共生社会を目指す取り組みに参画。