公立大学法人 都留文科大学

Think Globally, Act Locally

英文学科

研究室 & ゼミ紹介7(英文学科)

更新日:2024年5月1日 ページ番号:0010960

授業風景

文学からアメリカの人種、ジェンダー、
セクシュアリティを考える

中地 幸 先生
中地 幸 先生

 20世紀初頭のアメリカでは、「黒人」の血が一滴でも入れば「黒人」であるという「ワンドロップ・ルール」がありました。この人種規定は矛盾に満ちています。そもそもハーフの人でも外見がどちらの親に似るかはわかりません。ましてや血が4分の1、8分の1、16分の1となったら、外見は「白人」という人も出てきます。そのような「白い黒人」が「白人」として生きることを「パッシング」といい、20世紀初頭のアメリカでは人種に翻弄される「悲劇的混血児」を主人公にした「パッシング小説」が流行しました。
 興味深いのは、アフリカ系アメリカ人によるパッシング小説でも、「白人」になりすました主人公が不幸になる(すなわち制裁される)結末がほとんどだということです。なぜ差別的な人種規定に苦しむ人々がワンドロップ・ルールを支持したのでしょうか。それは、人種差別との闘いのために、人種の結束と人種への忠誠を唱えることが重要だったからだと考えられます。
 そんな中でハーレムの文学界に彗星のように現れたネラ・ラーセンは「人種の母」として生きる混血女性の苦しみを描き、また異性愛社会の中で抑圧された同性愛的感情をも描き出しました。この作品に出てくる美しくミステリアスな白い黒人クレア・ケンドリーは私の大好きなキャラクターです。欲しいものは何でも手に入れようとするクレアの危険な欲望は人種とジェンダー、セクシュアリティの境界を攪乱し続けます。ゼミでは小説を掘り下げて読むことの面白さと奴隷制という負の歴史を持つアメリカ社会の複雑さを伝えていければと思っています。