教員の資質能力の向上方策に関する本学のパブリックコメント

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中央教育審議会「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」(審議のまとめ)へのコメント

これは、中央教育審議会「教員の資質能力向上特別部会」が2012(平成24)年5月15日に公表した『教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について(審議のまとめ)』に対するパブリック・コメントとして、都留文科大学が6月4日付けで提出した意見です。大学の姿勢を示すものとして意味あるものと考え、公表することにしました。
なお、中央教育審議会の『審議のまとめ』は、文部科学省のホームページより閲覧できます。

文部科学省のホームページ

文部科学省のホームページ「審議のまとめ」 (PDF 327KB)

はじめに

(1)教員の資質能力を包括的、総合的に把握する観点は重要である

「教職生活の全体を通じた、教員の資質能力の総合的な向上方策について(審議のまとめ)」という表現は、教員の資質能力を包括的、総合的なものととらえようとする観点を示しており、重要と考える。教員、とくに小学校の教員が子どもに与える影響は全人格的なものであるから、教員の資質能力も個別の教育技術や知識の習得に矮小化されるべきではない。

(2)学校を魅力ある職場とする支援に期待する

力量あるベテラン教員たちからは、「子どもに笑顔を見せられなくなったら教員を辞める」といった言葉がしばしば聞かれる。教員の笑顔は、技術的な能力に劣らず、子どもたちにとって大切な意味を持ち、教員の資質にもかかわっている。その観点から、III-7「学校が魅力ある職場となるための支援」の趣旨に期待する。それが資質向上に向けた教員の自発的努力を促し、求められる人材育成にもつながるものと考える。

I-1 現状認識について

(1)学校現場における足元の困難をより重視すべきである

書かれている内容の範囲で異論はないが、学校現場が置かれている足元の困難についての現状認識がやや薄いように思われる。「学級崩壊」現象、学習のスタートラインに立てない子どもの増加、不安定な親の理不尽な要求への対処等、教員が取り組まなければならない課題が山積しており、そのかなりの部分は一人の教員、あるいは一つの学校だけで解決できる問題ではない。

(2)若手教員の悩みに対応し、資質向上につなぐ方策が求められる

こうした現状において、実践力を重視するあまり、新任教員に完璧な力をもって教壇に立てと要求することには無理があり、近年の若手教員の離職、自殺問題にもつながっている。教職を目指して学び続けてきた、感受性豊かな素質ある若手教員の離職を防ぎ、学校教育を担う中核へと育てていくためにも、教員の悩みや困難への対応を足場とした資質向上策が重視されるべきである。

I-2 教員に求められる資質能力について

(1)個別の技能以上に、コアとなる資質能力を育てることが肝要である

経験知と暗黙知の一般化の重要性が指摘されているが、この点はこれまでにない特徴として評価できる。特に暗黙知は人格との結びつきが強いから、教員の資質能力は、種々の技能や知識の集積であると同時に、その教員の中心軸となるものの見方、教育観と結びついて機能する。したがって、個別の資質能力を列挙するにとどまらず、コアとなる資質能力を明確にし、それを理論と実践の往還によって育てる必要がある。

(2)子どもや親を深く理解し可能性を引き出す資質能力

そして、先に述べた今日の現場の状況においてコアとして求められるのは、子ども、さらに親を、彼らが置かれた環境の中で深く理解し、素人目には問題行動にしか見えない子どもの行動に内在している力をプラスの方向へ引き出せるような教科指導、生徒指導を展開できる資質能力であろう。

(3)チームワークを組み、連携の中心となる資質能力

とはいえ、困難の解決を個々の教員の力量のみに期待できるほど現状は甘くはないから、同僚とチームワークを組み、様々な発達援助職や地域、家庭と連携することが不可欠になっている。この連携において、子どもに日々最も直接的に向き合う立場として中心的な役割を果たすのも教員であるから、この点の資質能力も重視する必要がある。

(4)管理職にも子ども理解と「理論と実践の往還」の能力が求められる

こうした資質能力は、「総合的な人間力」といったものには解消されず、理論と実践の往還によって省察を繰り返し、常に更新させるべき知的な性質のものである。校長についても、マネジメント力が重視されていること自体に異論はないが、「学級崩壊」現象への対処で管理職の能力差が如実に表れるように、子どもの現状を実践的・学問的に深く理解し、それに対する手立てを的確に判断することができる現場研究者としての資質能力を備えた校長でなければ、リーダーシップを発揮する前提となる教員たちの信頼を獲得することは難しい。

(5)社会人としての資質能力を向上させる条件の保障が求められる

教員の資質能力を包括的・総合的なものととらえる場合、教員自身が社会人として尊敬される生き方ができるかどうかも問われる。たとえば子どもたちに対して公平・平等な扱いができるか、社会問題に対して積極的に解決しようとしているかといったことを、子どもたちは授業で学びながら敏感に感じ取る。そのため、教員が社会人として有意義な活動ができる条件の保障も資質能力の向上に深くかかわると考える。

I-3 取り組むべき課題について

(1)「学び続ける教員像」を現場に根ざしたものとして構想する

「学び続ける教員像」の確立、「理論と実践の往還」という課題提起に賛成する。しかし、「学び続ける」ことが現場研究から離れた形態での研修を中心とするものとして構想されるなら、十全な「理論と実践の往還」とはならず、理論を実践に下ろしていくという方向性が強くなってしまう。「審議のまとめ」はややその傾きが強いように感じられる。

(2)日常的に「理論と実践の往還」を行う現場研究者としての教員

もちろん従来型の研修にも意味はあるが、「理論と実践の往還」を日常的に行い、現場の複雑な状況への臨機応変な対処や一人ひとりの学びに対応する高度で柔軟な教育を可能にするには、教員自身が自分の実践や学校のあり方を研究的に分析できるという、現場研究者としての資質能力を持つことが求められる。その観点から、III-3(1)「現職研修等の改善」も考える必要があろう。それは「自らの実践を理論に基づき振り返る」というだけでなく、実践を分析することを通じて理論を生産するというベクトルも含む必要がある。

II-1 教員養成改革の方向性

(1)地域・近隣の学校との日常的な研究連携をベースにした養成

学校を大学院の実習・学修の拠点とする事例は興味深いが、遠方の拠点校まで出向くことが大学教員の過度の負担となり、パフォーマンスを下げることにならないよう注意が必要である。学校現場の困難状況においては、研究者も日頃から学校に入り、子どもの生活全体を視野に入れることが必要となるから、大学の地元・近隣の学校との日常的な連携がベースになることが望ましい。
養成の方法として、大学院レベルでは、大学の研究者と現職教員や院生が共に学校現場に入り、教員が包括的な資質能力を展開しているフィールドの中で共同的な研究を行うこと、学部レベルでは、学校支援ボランティアなどを指導に組み込み、理論と実践の往還の初歩を体得させることが有効であろう。
したがって、これからの大学には、最新の学問的知見を伝授するだけではなく、保護者や子どもの暮らしまでを視野に入れて現場研究を行うセンターとしての機能が求められることになろう。

(2)ハイブリッド型大学院の提案

現行の教職大学院では、修士論文を課さないこととなっているが、現場研究者として実践を理論化する能力の重要性を考えれば、実践研究に基づくペーパー(研究の質を保った論文や報告書など)作成のトレーニングは必要であり、既存のアカデミック型大学院と教職大学院の長所を統合した、いわばハイブリッド型の大学院教育が有効ではなかろうか。アカデミック型の大学院をその方向に改革していくことも考えられる。

II-2 教員免許制度改革の方向性

(1)修士レベル化を「1年から2年程度」とすることに賛成する

学部4年への追加部分を、一律2年ではなく、「1年から2年程度の修士レベル化」とすることに賛成する。一律2年とすると、教員の待遇改善と連動しなければ、負担に見合わない職種と見なされ、志願者が減る可能性が高い。

(2)基礎免許状の位置づけについて

基礎免許状については、学士課程修了レベルということで現行の一種免許に相当するが、いま主力をなしている教員層に対応する資格として考えたとき、「審議のまとめ」の要求水準と位置づけは低くなりすぎていないか。

(3)上位免許状新設で現場のチームワークを乱さない配慮が必要である

教員の職務においてはチームワークが極めて重要であることを考えれば、現行の主力が基礎免許状相当であるのに対し、さらに一般免許状と専門免許状という二段階にわたる上位免許状を設定することについては、職場の協働関係を乱さぬよう、また児童・生徒へのしわ寄せが生じないよう配慮が必要である。

(4)実力ある教員が上位免許状を取得しにくい現状を考慮すべきである

現状においても、現場で力量があると認められた教員は各学校で重要な役割を背負い、多忙な状態に置かれており、管理職からは「エース級の教員を大学院に出すわけにはいかない」という声が少なからず聞かれる。すでに教職大学院でも矛盾が生じているが、この状態が解消されないまま専門免許状を制度化すると、最も力量ある教員が免許状では下位にランクされる事態が生じ、学校内の指導関係、モチベーションに問題が生ずることが危惧される。

(5)上位免許状の認定では大学と連携した現場研修を重視すべきである

その点で「審議のまとめ」でも「校内研修や近隣の学校との合同研修会」を認定するとしていることは重要である。これらや自主的研修に大学の研究者が関与することで現場研究としての質を担保するような制度が有効であろう。

III-2 教員養成、採用から初任者の段階の改善方策

(1)ダブルカウントの再検討は不可欠である

教職大学院を拡充するとすれば、「審議のまとめ」にあるようにダブルカウントの在り方についての検討が不可欠である。

(2)「学習科学」、「教育内容構成」は地域と連携した各大学・大学院で

「学習科学」、「教育内容構成」の研究を含む、学校現場での実践につながる教育学研究は積極的に推進すべき領域である。しかし、理論と実践の往還の担い手として、また現場研究者としての教員が求められているという観点から言えば、それは一部の拠点で行い、その成果を他大学に普及するというトップダウン型の枠組みではなく、各大学・大学院が地域や教育委員会との連携を基盤としてそれぞれに実践的に行う成果を横につなげる枠組みとすべきである。 

以上

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