フィールド体験「里」編の第三回目は、都留市の十日市場・夏狩地域に出向き、湧水を活かした取り組み(わさびづくり、養魚場運営)について学びました。また豊富な水が汚染の危機にさらされている実態に触れるため、不法投棄の現場でゴミの回収作業も実施しました。
まずは、わさびづくりに取り組む菊地富美男さんの農園を訪問。菊地さんは、ご祖父の代からわさび農園を営み、栽培からその加工・販売まで行っています。農園の入り口では、富士山麓で集水され、地下浸透した伏流水が、20年近くかかって十日市場までたどり着き古富士山と新富士山の岩盤の間から湧き出ている様子を見学。この水の恵みを活かしてわさびづくりが行われています。
写真 水の湧き出る様子を見学する学生たち
水の湧口から前方を見るとずっと奥まで見事なわさび棚田と石垣が築かれています。これも初代(ご祖父)が発破等で石を採取、積み上げて作り上げたもので、圧倒される景観です。
3代目の菊地さんがわさびづくりを始めたときは、農薬を使用していました。しかし農薬使用のわさびづくりに限界を感じた菊池さんは、無農薬に切りかえ、3年以上、試行錯誤なさったとのこと。ようやく自然の循環の仕組みが安定して、現在では量産ではなく質を大事にした栽培方法をとっていること等をお話いただきました。
写真 学生たちからは、「土の流出はないのか」「日常的な管理、例えば除草等の手間はどれぐらい大変なのか」等、具体的な質問が出ました。
写真 一列に並んで学生たちが食しているのは「イタドリ」。「あっ、これ食べたことはあるけれど、名前は知りませんでした」と学生。
写真 わさび農園を背景に撮影
菊地さんは、仕事の合間や早朝などを利用して、環境保全活動も展開されています。周辺の川や水路、沢には、たくさんのゴミが投げ込まれています。水質の悪化、有害物質の地下浸透等の原因となる不法投棄の実態を知ろうということで、わさび農園から少し南下し、周辺の田を潤して走る水路の終着点にある傾斜地に移動。
都留市と西桂町との境界地域であるこの一帯は、富士山を裾野まで臨める絶景ポイントの一つですが、道路脇には、菊地さんたちが普段から地道に回収作業を行ってきた投棄物がどっさり積まれています。家具や家電製品等、大型のゴミも少なくありません。学生たちは、グループごとに担当区域を決め、回収作業を行いました。
写真 4月上旬の同場所の不法投棄の様子。家電製品の投げ込みも。
写真 分別しながら、どんなゴミがあるのか観察。肥料袋や野菜用支柱などの農業資材、バッテリー、解体した家具、ブリキ缶の蓋、ホウキ、食器、衣類、割れた一升瓶...。飲料空缶、空瓶にはしっかり土砂が詰まっていてずっしり重くなっています。
不法投棄の現場を後にして、次は柴崎養魚場の柴崎利春さんのもとにむかいます。都留市の十日市場、夏狩地域は、すばらしい農村風景が広がる地域。歩いていても気持ちいい!
柴崎利春さんは十日市場で養魚場を営なんでいます。当初は道志村で養魚に取り組んでいましたが、より安定した水温、水質を求めて、都留に移り住んだとのこと。ニジマス、ヤマメ、イトウ等を養殖し、一般の市場を通さずに東京等大都市圏の「こだわりの」料理店に直接販売なさっています。柴崎さんの養魚は付加価値が高く、例えば餌等も南極観測船と提携した良質のオキアミを利用する等、お話の端々から、尽きない工夫がたくさんうかがえます。
写真 「学生のみなさんは川魚にあまり馴染みがないでしょう。話だけではわかりにくいから」と目の前でニジマスをさばいてくださいました! 「魚の皮が好き」という学生に対しては、「皮は焼くといい、あとは味噌汁の出汁に使えるよ」と3枚おろしの骨と頭、皮を袋詰めに。
柴崎さんは、こうした養殖の事業の傍ら、都留市内の小学校では児童たちにヤマメ飼育を指導したり、魚類図鑑づくりに協力したり、と幅広い活動を展開。都留文科大学の学生たちも、「畑をやりたい」、「印伝(山梨の伝統工芸)を手作りしたい」等、「やりたい」ことをどんどん柴崎さんのもとに持ち込みます。柴崎さんは、そんな学生たちの思いを受け止めてくださり、知恵、アドバイス、活動の場を提供...ここはいわばオープンな「実験場」と言えましょう。
ちょうど私たちがうかがった時も、本学の初等教育学科で音楽、数学を専攻する4年の学生二名が、柴崎さんの畑でジャガイモの土寄せ作業をしたところでした。なぜ、畑に取り組むのか、「3.11をきっかけに、自分で食べ物をつくろうと思って、昨年から柴崎さんの畑に通い始めました」という先輩の言葉には重みがあって、見学に訪れた学生たちの中からも1人、さっそく畑づくりに挑戦したいという声があがったようです。
写真 本学の学生たちの畑が広がる中で、「自給」の醍醐味を語る柴崎さん
写真 震災をきっかけに野菜づくりを始めた思いを語る、初教の先輩
写真 お味噌汁用にいただいたニジマスの骨、皮を手に。
これで各クラスとも、第1回目の現場研修を終え、来週は「ふりかえり」の回。いずれも盛りだくさんの研修でしたが、これを自分なりにどう解釈し、まとめるのか、特に今後、自らの研究課題と行動指針にどう結び付けていくのか、それが「ふりかえり」授業の目標です(田中夏)。
月刊「ソトコト」という雑誌に、私のふるさと(静岡県三島市)で頑張ってきた、水辺再生活動についての記事が掲載されましたので、紹介させていただきます。
約25年もの間、ゴミが放置され、ヘドロが堆積し、悪臭を放っていた、源兵衛川を、10年の歳月をかけて再生しました。語れば多くの苦労がありました。しかし、多様な人々を束ね、知恵と行動力を結集すれば、難題も容易に解決できます。
これらの知恵や具体的な手法を大学で学生たちに伝えています。1人1人の力は小さいものです。しかし、1人の情熱と努力、発想、活動から物事が始まり、賛同者たちとの協働の力で、行政や政治の力を超えた、市民力・地域力を発揮でき、難題を解決することができます。
興味や関心がありましたら、「グラウンドワーク三島」のホームページを見てください。グラウンドワークの底力と可能性を学べます。現場での多様な活動を体験に来てください。
■月刊「ソトコト」2012年4月号抜粋.pdf(PDFファイル)
